注文住宅の諸費用の内訳・目安はいくら?
注文住宅の諸費用の内訳・目安はいくら?
注文住宅の諸費用の内訳や相場の目安はいくら?
注文住宅の購入時には、土地代や建物代のほかに諸費用がかかります。「何にどれだけかかるのか」が明確に分かる納得の予算を組んだり、無理のない資金計画を立てたりするためには、この諸費用を含めた見積もりが大切です。注文住宅の諸費用に関する基礎知識を持って予算オーバーを防ぐために、分かりやすく諸費用の内訳項目やそれぞれの相場について解説していきます。諸費用の節約ポイントもぜひ参考にしてください。
1.1.諸費用に含まれるもの
注文住宅購入時にかかる「諸費用」とは、土地代と住宅を建築するのにかかるコスト以外に支払いが必要な費用のことをいいます。一般的にかかる諸費用は次のようなものです。
土地購入を仲介した不動産会社への仲介手数料
登記にかかる費用
不動産取得税
住宅ローンの借り入れにかかる手数料
火災保険料
外構工事費用 など
1.2.諸費用の目安
注文住宅購入にかかる諸費用の目安は、一般的に土地代と建築費用の合計額×10〜12%程度。建築総額ごとにまとめると次のとおりです。
建築総額 諸費用の目安
2,500万円 250〜300万円
3,000万円 300〜360万円
4,000万円 400〜480万円
5,000万円 500〜600万円
この目安額は住宅取得にともなって必要となる費用のみであり、ほかに引っ越し費用や家具・家電類の購入費用などがかかるため注意しましょう。
2.注文住宅購入時の諸費用の内訳【土地】
ここからは、項目ごとに諸費用の内訳を詳しく見ていきます。まず、土地にかかる諸費用をご紹介します。
仲介手数料
不動産取得税
契約書の印紙税
登記費用
測量費用
地目変更費用
造成費用
解体費用
開発申請費用
2.1.仲介手数料
不動産会社に仲介を依頼し土地を購入した場合に不動産会社に成功報酬として支払うのが仲介手数料です。土地の購入価格に応じた上限額の範囲内で設定されます。購入価格が400万円を超えるケースでは、「購入価格×3%+ 6万円+消費税」が上限額です。
2.2.不動産取得税
不動産取得税は、不動産を新たに取得したときに課せられる税金です。注文住宅を建てるための土地(宅地)にかかる不動産取得税には軽減措置と控除が設定されており、「固定資産税評価額×1/2×3%」から、①②いずれか大きな控除額を差し引いた金額が納付額となります。
① 4万5,000円
②土地1平方メートルあたりの固定資産税評価額×1/2×(床面積×2)×3%
上記をまとめると、不動産取得税の計算式は次のとおりです。
宅地の不動産取得税額
= 固定資産税評価額×1/2×3%−①②いずれか大きな控除額
2.3.契約書の印紙税
土地の売買契約を締結する際、売買契約書に印紙を貼付する形で印紙税を納めます。印紙税の税額は契約金額に応じて以下のように定められています。なお、不動産の売買契約書にかかる印紙税には軽減措置があり、適用期限が2027年3月末までに延長されました。
契約金額 本則税額 軽減税額
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
2.4.登記費用
土地を購入したら、売り主から買い主へ所有権を移転する必要があります。所有権移転登記にあたっては登録免許税の支払いが必要です。土地売買時の所有権移転にともなう登録免許税には軽減措置が適用され(2026年3月末まで)、「固定資産税額×0.15%」がかかります。
2.5.測量費用
土地購入時には、隣人とのトラブルを避けるために敷地境界線を明らかにしておく必要があります。売り主側で確定測量図を手配し、買い主立ち会いのもとで確認するのが通常です。不確定な箇所がある場合は売り主に測量を依頼します。
しかし、売り主が測量費用を負担できないケースなどでは買い主が負担せざるを得ないこともあります。費用の目安は30万円〜60万円程度です。
2.6.地目変更費用
購入した土地の地目が「宅地」以外の場合には、宅地への変更登記をする必要があります。費用の目安は5万円程度です。
2.7.造成費用
購入した土地に起伏がある場合などは、建物を建てられる状態に造成する必要があります。その場合にかかる費用です。手を入れる度合いにもよりますが、20万円〜100万円程度を見込んでおきましょう。
2.8.解体費用
古家付き土地を購入した際は、既存の建物を解体して更地にする必要があります。解体する建物の構造や大きさによって費用は変動しますが、150万円〜300万円程度かかるのが一般的です。
2.9.開発申請費用
市街化調整区域にある土地など、一定の要件の土地に建物を建てる場合には開発申請が必要になるケースがあります。開発申請には実費と手間賃がかかるため、合わせて20万円〜50万円程度を見込んでおきましょう。
3.注文住宅購入時の諸費用の内訳【建物】
続いて、建物に関してかかる注文住宅購入時の諸費用の内訳をご紹介します。
地盤調査費用
契約書の印紙代
登記費用
外構工事費用
ガス・水道の引き込み費用
設計・工事監理費用
不動産取得税
各種調査にかかる費用
3.1.地盤調査費用
土地が建物を建てるのに適しているかを確認するために地盤調査をおこなう費用です。地盤が弱いと地盤沈下や災害のリスクも考えられるので、事前に災害調査を実施したほうが安全でしょう。費用は5万円程度が一般的ですが、場合によってはそれ以上かかることもあります。
3.2.契約書の印紙代
売買契約書と同様、家を新築する際に建設会社と結ぶ建設工事請負契約書にも、印紙を貼付して印紙税を支払います。建設工事請負契約書の印紙税も軽減税率が適用されます。
契約金額 本則税額 軽減税額
500万円超1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超1億円以下 6万円 3万円
1億円超5億円以下 10万円 6万円
3.3.登記費用
土地の場合は所有権が売り主から買い主へ移転するため「所有権移転登記」が必要でしたが、建物は新たに建設するため「所有権保存登記」が求められます。所有権保存登記にも登録免許税がかかりますが、2027年3月末までにマイホームを新築するケースでは軽減税率が適用されます。
軽減税率適用後の税額は「建物の不動産価格(登記所の認定価格)×0.15%」。特定認定長期優良住宅など、一部の住宅ではさらに税率が軽減され「0.1%」となります。
3.4.外構工事費用
庭や駐車場、玄関アプローチなど、建物の周辺部の工事にかかる費用は、本体工事費用とは別です。住宅会社に依頼するケースのほか、外構の専門施工会社に依頼するケースもあります。外構工事にかかる費用は100万円〜300万円程度が目安です。
3.5.ガス・水道の引き込み費用
敷地内にガス管や水道管を引き込む必要があるケースでは、引き込み工事にかかる費用の負担も発生します。都市ガス供給エリアではガス管の引き込みが必要となり、おおむね10万円〜20万円の費用がかかります。
上下水道管は自治体や管の口径によって異なるものの、おおむね50万円〜100万円が費用の目安です。
3.6.設計・工事監理費用
ハウスメーカーに依頼する場合、設計や工事の監理にかかる費用は建設工事費用に含まれているケースがほとんどです。しかし、工務店や設計事務所に建築を依頼する場合には、別に設計監理契約書を作成することもあります。この場合、契約書に貼付する印紙税が必要です。
3.7.不動産取得税
土地と同様、新築した建物に関しても不動産取得税が課せられます。建物も3%の軽減税率が適用され、さらに床面積50平方メートル以上240平方メートル以下の新築住宅では評価額から1,200万円の控除が受けられます。
上記を踏まえると、注文住宅の建物にかかる不動産取得税の計算式は次のとおりです。
建物の不動産取得税額=(固定資産税評価額–1,200万円)×3%
なお、固定資産税評価額は新築価格の6割程度を目安に考えましょう。
3.8.各種調査にかかる費用
建物を新築する際は建築確認・完了検査を受ける必要があるほか、長期優良住宅などの認定や耐震性の証明など、第三者機関による検査を受けることもあります。こうした各種調査にかかる費用も見込んでおくのがおすすめです。
4.注文住宅購入時の諸費用の内訳【住宅ローン】
注文住宅購入にあたって大半の方が利用する住宅ローン。融資を受ける際にも次のような諸費用がかかります。
契約書の印紙代
事務手数料
火災・地震保険料
ローン保証料
つなぎ融資を受けるときの利息
抵当権設定費用
団体信用生命保険料
4.1.契約書の印紙代
住宅ローン契約時に金融機関と締結する金銭消費貸借契約書にも印紙税がかかります。金銭消費貸借契約書に軽減税率は適用されません。
契約金額 税額
500万円超1,000万円以下 1万円
1,000万円超5,000万円以下 2万円
5,000万円超1億円以下 6万円
1億円超5億円以下 10万円
4.2.事務手数料
住宅ローンを借り入れる金融機関に対して事務手数料を支払う必要があります。手数料の相場は10万円〜20万円程度です。
4.3.火災・地震保険料
金融機関の多くは、火災保険への加入を融資条件として義務付けています。火災保険だけでは地震や津波などによる被害に備えられないため、セットで地震保険にも加入するのが一般的です。保険料は保障額や保障内容によって異なり、最長5年契約で以後更新していく形となっています。
4.4.ローン保証料
かつて住宅ローンを借り入れる際には連帯保証人を付けるのが一般的でしたが、今ではそれに代わって金融機関と提携する保証機関と契約するのが基本になっています。この保証契約に対してかかるのが「ローン保証料」であり、一括で前払いするか金利上乗せで支払うかを選べます。
多くの方は金利上乗せで支払いますが、返済期間が長引くほど保証料も高額になる点には要注意です。
4.5.つなぎ融資を受けるときの利息
注文住宅の場合、土地を購入してから建物を設計・施工するため、建物完成前に土地代などの支払いが発生するケースが少なくありません。しかし、住宅ローンは建物完成後に融資が実行されるため、土地購入に関する支払いは賄えないという問題が発生します。このとき、住宅ローン借り入れまでの期間に受ける融資を「つなぎ融資」と呼びます。利用する場合は工事期間中の利息の支払いが必要です。
4.6.抵当権設定費用
融資する金融機関は、対象不動産に抵当権を設定し担保とするため、抵当権設定登記にかかる登録免許税の支払いが必要です。抵当権設定登記の登録免許税も2027年3月末まで軽減税率が適用され、一定の要件を満たすマイホーム取得では「債権額×0.1%」がかかります。
4.7.団体信用生命保険料
多くの金融機関では、住宅ローン借り入れとともに団体信用生命保険(団信)への加入を義務付けています。団信は住宅ローン借入時限定で加入できる保険で、債務者が万が一返済中に死亡したり所定の高度障害状態になったりして返済不能に陥った際、残債の返済が免除されます。
5.注文住宅購入時の諸費用の内訳【その他】
ここまでご紹介したほかにも、注文住宅購入時にかかる諸費用があります。詳しく見ていきましょう。
5.1.引っ越し費用
本体費用以外でかかる費用として、新居への引っ越し費用が挙げられます。引っ越しに合わせて家具や家電を買い替える場合には、その購入費用も見込んでおく必要があるでしょう。窓の多い家や大開口がある家などではカーテン代が意外とかかるため要注意です。
5.2.地鎮祭を実施する際の費用
建物の起工時、土地の神様に挨拶をして工事の安全を願う儀式が地鎮祭です。必須ではないものの、建設会社や親戚などから実施を求められるケースもあるでしょう。地鎮祭を実施する場合、費用の目安は3万円〜4万円程度です。
6.注文住宅購入時の諸費用を節約するには?
ここまで見てきたように、注文住宅購入時にはまとまった額の諸費用がかかります。諸費用を節約するにはどのような点を意識すれば良いのでしょうか。
6.1.多めの金額で予算組みをしておく
購入の計画当初から、諸費用を見込んだ余裕のある予算組みを心がけましょう。建物に多くの要望を盛り込んで計画してしまうと、諸費用が膨らんだ場合に資金計画に影響を及ぼす恐れがあります。
6.2.安さにとらわれすぎないようにする
費用を抑えようとするあまり安さを重視した仕様や商品ばかりを選んでいると、あとから損をしたり後悔したりする可能性があります。家は数十年にわたって住み続けるもの。メンテナンスコストや将来のローン返済など、先を見越した経済性で選ぶことも重要です。
6.3.優遇制度を活用する
新築のマイホームに関しては、登録免許税、固定資産税、都市計画税などに優遇制度が設けられています。自動的に適用されるものばかりではないため、どの制度が活用できるのかを事前に確認しておきましょう。優遇制度の有効活用により、税金などの諸費用を大きく抑えられる可能性があります。
6.4.不要な諸費用を削減する
税金や手数料などを削減するのはなかなか難しいですが、火災保険料や引っ越し料金などは工夫次第で節約できます。火災保険であれば保障内容を必要最低限の内容にする、引っ越し代であれば閑散期の平日に引っ越すなどの工夫が有効です。
6.5.仲介手数料が不要の場合がある
諸費用のなかでも大きなウェイトを占めるのが、不動産会社へ支払う仲介手数料です。仲介手数料はあくまでも不動産会社の仲介で土地を購入した場合にかかるものであり、土地所有者から直接購入するケースやハウスメーカー・工務店が所有している土地に家を建てるケースなどではかかりません。
諸費用を節約したいなら、仲介手数料のかからない土地を選ぶのも効果的です。
7.1.注文住宅の諸費用はいつ払う?
諸費用の項目によって支払うタイミングは異なります。例えば、土地購入時に支払う費用としては、売買契約書の印紙税、所有権移転登記の登録免許税、不動産取得税、仲介手数料などが挙げられます。住宅ローン契約時には事務手数料、保証料など、建物工事に際しては建設工事請負契約書の印紙税を支払う必要があるでしょう。引っ越し代や家具・家電の購入費用は、引渡し後にかかる費用です。
7.2.注文住宅の諸費用の支払い方法は?
建物本体費用と異なり、諸費用は分割払いが原則認められません。現金での一括払いが基本です。
7.3.注文住宅の諸費用を現金で払えない場合は?
金融機関によっては、諸費用も合わせて借り入れる「諸費用ローン」の利用も可能です。ただし、ローン総額が物件価格を上回る「オーバーローン」状態になるのでおすすめはできません。
8.まとめ
注文住宅の購入には、建設費用と土地代の合計に対して10〜12%ほどの諸費用がかかるといわれています。ほかにも引っ越し代や家具・家電の購入費用などもかかるため、住宅ローンを利用する場合でも一定の現金は用意しておくべきでしょう。
諸費用を賄いきれない場合には「諸費用ローン」を活用する手があるものの、オーバーローンになるため、できれば現金で支払いたいところです。今回ご紹介した方法を実践して、なるべく諸費用の金額を抑えていきましょう。「諸費用がどれくらいかかるのか」「そもそも企画住宅や注文住宅にすべきか建売住宅にすべきか」などのお悩みをお持ちの際は、ご相談ください。